【建築士向け】フタル酸樹脂エナメル(FE)とは、特徴や適用下地は?

塗装
  • フタル酸樹脂エナメルってどんな塗料?
  • どんな場所に塗るの?
  • メリット、デメリットは?

塗料はたくさん種類があり、用途や適用下地が違ってきます。
適切な塗装の設計ができるよう。フタル酸樹脂エナメル(FE)について解説します。

塗料の種類や記号、適用下地、特徴は一覧表として下記記事にまとめていますのでそちらもご覧ください。

フタル酸樹脂エナメルはこんな塗料

フタル酸樹脂を用いる塗料として油の変性量の多い長油性のフタル酸樹脂を用いた「合成樹脂調合ペイント(SOP)」がありますが、フタル酸樹脂エナメルは油の変性量の少ない中油性のフタル酸樹脂を用いています。

「合成樹脂調合ペイント(SOP)」より高級な仕上げで、中油性のフタル酸樹脂を用いているためより「合成樹脂調合ペイント(SOP)」より塗膜が硬く、耐候性があり、乾燥が早く、光沢がありきれいに仕上がります。

フタル酸樹脂エナメルと同様にフタル酸樹脂を用いたものに「フタル酸樹脂ワニス」があります。
「フタル酸樹脂ワニス」は透明仕上げで主に木部に用いられます。

現在では「フタル酸樹脂エナメル」は「合成樹脂調合ペイント」との差異がなくなってきており、公共建築工事標準仕様書では「フタル酸樹脂エナメル」の記述は削除されて、公共建築改修工事標準仕様書に記載があるだけとなっています。

フタル酸樹脂エナメルの略号

フタル酸樹脂エナメルは略号として日本建築学会のJASS 18、公共建築工事標準仕様書などとも共に「FE」と表記されています。

日本工業規格のJISでは「JIS K 5572 」に定められています。
ちなみに木部に用いるフタル酸樹脂ワニスは「JIS K 5562」に定められています。

フタル酸樹脂エナメルの適用場所

フタル酸樹脂エナメルは屋内外の不透明仕上げに用いられ、主に造作材や柱、建具、壁面等の木部および鋼製建具、設備機器等の鉄鋼面や亜鉛めっき鋼面に用いることができます。

現場では「合成樹脂調合ペイント」より平滑性、美装に優れることから内部の鋼製建具や造作材に用いられ、また、塗膜が硬く耐摩耗性が高いので設備機器の塗装に用いられる場合が多いです。

JISでは1類、2類、3類に分類されており、1類は屋内、2類は屋外、3類は屋内外で速乾性を有するものに分類されています。

耐用年数

屋内に用いる場合は長持ちします。屋外に用いる場合はおおむね5年程度が塗り替えの目安です。

フタル酸樹脂エナメルのメリット、デメリット

メリット

  1. 合成樹脂調合ペイントより平滑性、美装性に優れる
  2. 合成樹脂調合ペイントより塗膜が厚く耐摩耗性に優れる
  3. 合成樹脂調合ペイントより乾燥が早い

上記のように「フタル酸樹脂エナメル」は「合成樹脂調合ペイント」より仕上りがよく、耐摩耗性に優れており、「合成樹脂調合ペイント」より高級な塗装仕上げとなります。が、現在では差異が無くなってきています。

デメリット

  1. 塗料の中では乾燥時間が長い方
  2. 鮮やかな色を使った場合、濁って見えることがある
  3. 合成樹脂調合ペイントよりコストがかかる
  4. コンクリートには塗ることができない

下地調整のポイント

フタル酸樹脂エナメルは下地調整の仕方で高級さが変わってきます。高級な仕上げでパテの回数が多く、オイルサーフェーサーを用いる仕様となっていて、より平滑性や美装性が要求される部位に用いられます。

特記仕様書の書き方

「フタル酸樹脂エナメル」は「合成樹脂調合ペイント」との差異がなくなってきていて平成31年の公共建築工事標準仕様書では「フタル酸樹脂エナメル」の記述は削除され、公共建築改修工事標準仕様書にのみ記述されています。

公共建築改修工事標準仕様書の適用範囲も”既存塗膜がフタル酸樹脂エナメルの塗替えにてきようする。”と記載があるよう、今後新築の現場での「フタル酸樹脂エナメル」の記述は見ることが無くなってくると思われます。

特記仕様書に記載す場合は、公共建築改修工事標準仕様書に記載の種類も1種しかないため木部か鉄部のどちらに塗るのか、適用場所はどこなのかを記載する程度の場合が多いです。

詳しい解説は「建築改修工事監理指針(下巻)」載っています。
会社にもあると思うので知識を増やすためにも確認してください。

まとめ

「フタル酸樹脂エナメル」は現在では合成樹脂調合ペイントとの差異が無くなってきており公共建築工事標準仕様書から削除され、公共建築改修工事標準仕様書にも適用箇所がフタル酸樹脂エナメルの塗替えに適用するとなっており、今後、「フタル酸樹脂エナメル」の表記は減っていくと思われます。

改修工事などで過去の図面を見ると「フタル酸樹脂エナメル」の記述があるのでどんな塗料かを理解していく必要がありますので、設計士として知識を持っておくといいです。

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