【建築士向け】合成樹脂エマルションペイント(EP)とは、特徴や適用下地は?

塗装
  • 合成樹脂エマルションペイントってどんな塗料?
  • つや有合成樹脂調合ペイントとはなにが違うの?
  • 外部にもつかえるの?
  • どういったところに使うことができるの?

塗料はたくさん種類があり、用途や適用下地が違ってきます。
適切な塗装の設計ができるよう。合成樹脂エマルションペイント(EP)について解説します。

塗料の種類や記号、適用下地、特徴は一覧表として下記記事にまとめていますのでそちらもご覧ください。

合成樹脂エマルションペイントとはこんな塗料

合成樹脂エマルションペイント(EP)とは水の中に合成樹脂が安定した状態で分散し混合して乳液状になり、エマルションとなったものに顔料を練りこんだ塗料です。コンクリートや石膏ボード下地などの塗装に用いられ、水で希釈できる水溶性塗料なので作業性がよく環境にやさしい塗料です。内外装で使用することが出来ますが耐水性や耐候性が低いため屋内での利用が多い塗料です。

合成樹脂エマルションペイントは一般的につやが無く、つやをつけて耐候性が上がったものはつや有合成樹脂エマルションペイント(EP-G)とよばれます。
メーカーの製品によっては7分つや、5分つや、3分つや、つや消しの製品があります。

アクリル樹脂を用いたものはAEPとも呼ばれ、内装塗料として広く用いられてきましたが現在は塗料の性能が向上して樹脂種による分け方が薄れてきて単にEPと表すことが多いです。

tips

エマルションとは乳液のことで、混じり合わない2つの液体が、一方の液体の中に微粒子状に分散した状態をいいます。牛乳やマヨネーズなどがその例です。

合成樹脂エマルションペイントは水がベースですが、溶剤をベースにしたものはNADなっど系塗料(非水分散形塗料)といいます。

合成樹脂エマルションペイントの記号

合成樹脂エマルションペイントは略号として「EP」と表記されます。

日本産業規格(JIS)では「JIS K 5663」に規定されていて、1種と2種が定められています。

JIS K 5663 1種は「主として屋外用」
JIS K 5663 2種は「主として屋内用」

上記のようにJISでは1種と2種が定められていおり、主として屋外用の1種の合成樹脂エマルションペイントは以前は外装塗装の主力として使われていましたが、耐久性などさらに優れた塗料が出てきたため現在では1種は「内部高級タイプ」、2種は「内部汎用タイプ」のような扱いになってきています。

メーカーの製品によってはJIS K 5663 1種で5分つや、3分つやの製品があります。
7分つやの製品はJIS規格品ではないものがあるので、製品としては問題ないですがJIS規格品でないものを使っても問題ないか物件ごとに確認が必要です。

合成樹脂エマルションペイントの適用場所

「合成樹脂エマルションペイント」は内装用の仕上げ材として多用されています。

適用下地はモルタルやコンクリートなどのセメント系素地石こうボードけい酸カルシウム板スレート板などに用いられていて、鉄部には適していません。

屋外に使用するには耐候性、耐久性が劣るため、実際の現場では内装の利用が多く、内装の塗料として主役と言っていいほど多用されています。

外部でも使えるの?

合成樹脂エマルションペイントは「JIS K 5663 1種」で主として屋外用とあるように屋外でも使うことが出来ますが、一般的につやが無い合成樹脂調合ペイントは耐久性、耐候性が低く、頻繁に塗り替えをする必要が出て経済性が悪いです。

実際の設計では外部に塗る場合はつやがあるつや有合成樹脂エマルションペイント(EP-G)を指定するこが多いです。

つや有合成樹脂調合ペイントでも軒裏など雨掛りのない部分に用いられることが多いです。

耐久性、耐用年数

屋外での耐久性

JIS K 5663 1種の屋外用の合成樹脂エマルションペイントでは、外部塗装での耐用年数は4年程度。

屋内での耐久性

水掛かりの無い屋内であれば十分な耐久性があります。

特記仕様書の書き方

特記仕様書は各会社により違いがありますが、おおむねJASSや公共建築工事標準仕様書をもとに作られていることが多いです。

公共建築工事標準仕様書で定められている合成樹脂調合エマルションペイントはA種、B種があり、A種は美装を目的にしたものの高級仕様。B種は一般的な塗装仕上げを示しています。
A種、B種の違いは下地の研磨や中塗りの回数を多くするなどで、仕上りの平滑さなどに違いが出てきます。

詳しい解説は「建築工事監理指針(下巻)」や日本建築学会の「建築工事標準仕様書・同解説 JASS 18」に載っています。
素地調整や塗装の工程についても載っていますので知識を増やすためにも確認することがおすすめです。
大抵の設計事務所にそろえてあると思いますので読んでみるのがおすすめです。

まとめ

合成樹脂エマルションペイントの特徴
記号 EP、JIS K 5663(1種、2種)
適用場所

内外装(JIS K 5663 1種:屋外用、2種:屋内用)
塗料の中でも内部用の仕上げとして非常に多く使用されている。
屋外は耐候性が高くなく他の優れた塗料がでてきているため使われなくなっている。

適用下地 モルタルやコンクリートなどのセメント系素地や石こうボード、けい酸カルシウム板、スレート板など
耐久性 内部での利用は問題ないが、外部塗装での耐用年数は4年程度
環境配慮

水溶性塗料で溶剤を使わないので環境にやさしく、においも少なく、低VOCで健康にもやさしい

特徴

つや消しが中心。
水溶性塗料で水で希釈することが出来る。作業性がよい。
手入れも水で洗えるので溶剤系塗料でシンナーなどをつかうより経済的。

合成樹脂エマルションペイントは内装の塗装材料として非常に多用されている塗料で今でもエマルション技術が進歩しており、これからも内装仕上げ材料として使われていく塗料だと思います。

建築の内装塗装仕上げで主力と言ってもいい塗料なので特徴や適用下地を理解して適切に設計していきたいですね。

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