- モルタル塗りとはどんな左官なの?
- セメントなどの配合は?
- どんな場所に採用されるの?
左官工事は塗る材料によりさまざまな特徴があります。
適切な左官仕上げの設計ができるよう、この記事では「モルタル塗り」について解説します。
左官の種類や記号、適用下地、特徴は一覧表として下記記事にまとめていますのでそちらもご覧ください。
モルタル塗りとは、こんな左官
モルタル塗りとは、湿式工法である左官工事の一種であり、セメントモルタル塗りとも呼ばれます。コテを使い壁や床などに塗り仕上げにもちいたり、タイルなどの下地塗りにもちいられます。
モルタルは一般的にセメント(普通ポルトランドセメント)と砂(細骨材)を1:3の割合で空練りしたものに水を加えて練り合わせたものがよく使われます。建築工事ではさらに作業性などよくするために混和材を用いることもあります。
ちなみに上記モルタルに砂利(粗骨材)を加えたものがコンクリートになります。
モルタルの配合による性質の違い
モルタル塗りは、下塗りと上塗りで求められる性質に違いがあります。どういう違いがあるかというと下塗りは強度を重視し、上塗りは仕上げなので奇麗さが求められます。
モルタル塗りの性質は配合によって調整ができ、下塗りは富調合、上塗りは貧調合のモルタルが適しています。
ラスモルタル塗り、鉄網モルタル塗りとは
モルタル塗りの下地はコンクリート躯体に直接仕上げるものと、ラス下地に仕上げるものに大きく分けられます。
モルタルの防火性能
モルタルは、不燃材料として告示で定められており、また、鉄網モルタルで適合する構造ものは防火構造と認められます。
モルタルは戦後、木造住宅の外壁の防火性能を確保するためによく用いられてきました。
モルタルの防水性能
モルタルは防水性能もありますが、防水性を当てにするのは危険です。
通常のセメントでつくったモルタルは常時水がかかる場所でなければ簡易な防水性を期待できますが、基本的には乾燥、硬化後は多孔質でじわりじわりと水分が伝わっていきます。
モルタルはひび割れなども起こるので、防水が必要な箇所ではさらに塗膜防水をするなど対策が必要です。
モルタルに防水材を混入したもので防水モルタル塗りもありますが、サッシ廻りのモルタル詰めなど簡易な防水としてのみ利用されており、防水が必要な箇所で防水モルタルのみというのは見かけなくなっています。
モルタル塗りの利用シーン
公共建築工事標準仕様書では、モルタル塗りの適用範囲をコンクリート下地、コンクリートブロック下地等の面にセメント、細骨材等を主材料としたモルタル塗りに適用する。とあります。
具体的には、コンクリートの壁や床でひずみや不陸がある箇所の補修。
コンクリートを打設した部位をより綺麗に見せるための仕上げやコンクリートブロックの美観を目的とした仕上げ
コンクリートの壁や床面にタイルなど張物をする場合の下地
鋼製建具の枠廻りのモルタル埋め
上記のように下地や仕上げ、補修にと様々なところで利用されています。
モルタル塗りの長所
モルタル塗りには下記の長所があります。
- 強度がある。
- 耐水性がある。
- 防火性がある。
- 幅広く普及していて品質が安定している
- 普及しているため手に入りやすい
- コストが安く経済性に優れている。
- ある程度自由な形にすることが可能
- 人の手で仕上げるので表情豊かな仕上げが可能
- 着色することによって色をつけた色モルタル仕上げも可能
上記のように建築材料にとって必要な性質が全てあり、とても使いやすい材料です。
モルタル塗りの短所
モルタル塗りは上記の長所があり、とても使いやすい材料ですが下記の短所もあります。
- 乾燥収縮があり、ひび割れを起こす場合がある。
- 湿式工法なので剥落する恐れがある。
- 固まる前の養生期間は外部から加わる力で跡が残る場合がある。
- 雨天での作業には適していない。
モルタル塗りの仕上げの種類
モルタル塗りの仕上げには大きく分けて、金ゴテ押さえ、木ゴテ押さえ、刷毛引きの3種類があります。
特徴を表にまとめました。
仕上の種類 | 特徴 | 施工箇所 |
金ゴテ押さえ | 平滑 |
壁・土間の平滑な仕上げ、 |
木ゴテ押さえ | 平らでざらざら | セメントモルタル貼りの下地 |
刷毛引き | コテむらが消える。箒はいたような凹凸がある表面になる。 | 土間のすべり止め仕上げ、吹付タイルの下地 |
まとめ
モルタル塗りは建築材料に要求される性能の強度、防火性能、防水性能のすべてを満たしていて自由な形状にすることが出来とても使いやすい材料です。
下地や補修など細かいところを含めると多くの現場で用いられていて欠かせない材料になっています。その分とても奥が深い材料です。
設計者として、モルタルの性能が正しく発揮できるようもっと知識をつけていきたいですね。