屋根勾配を決める!!急勾配、並勾配、緩勾配のメリット・デメリット

屋根
  • 屋根の勾配を決める要素は?
  • 急勾配、並勾配、緩勾配のメリット・デメリットは?

  そんな時に参考になる情報をまとめました。

屋根の勾配を決めるためには法規制による設定、外観デザイン上の設定、雨や雪を流す方向、屋根材料による設定などさまざまなことを考える必要があります。

ここでは設計時の参考となるよう屋根の勾配によるメリット、デメリットをまとめました。             

屋根勾配の決まる要素

屋根の勾配を決める要素は大きく分けて、デザインによるものと、建築基準法の高さ制限などによる法規制によるもの、機能によるもの、施工・コストによるものがあります。

設計では、屋根勾配の設定時に守らなければいけない要素を洗い出し、それを満たしたうえで屋根勾配を決めることになります。

屋根勾配の決まる要素まとめ

  • 法的規制による勾配の決定(道路斜線、北側斜線、日影規制など高さ制限のため)
  • 屋根の仕上げ材による勾配の制限
  • コスト的理由。急勾配だと屋根の面積が大きくなり工事費アップ、材料による価格の違いなど
  • 施工による設定。急勾配だと足場が必要になる、コストも増える
  • 外観デザインによる屋根勾配の設定
  • ロフトなど屋根裏利用による屋根裏高さの確保のための設定
  • 太陽光発電の効率をよくするための設定
  • 雪の落ちる方向のコントロール、落雪屋根、無落雪屋根の設定
  • 雨の流れる方向のコントロールによる設定

屋根の勾配の表し方

屋根の勾配は住宅では一般的に寸を使っています。住宅業界では今でも尺や寸を使っている場合が多いですが、陸屋根になると分数表記が一般的に使われています。

寸での表記は、3寸勾配や4寸勾配というように表示します。
例として、3寸勾配とは10寸すすんで3寸上がる勾配のことをいい、1.0mすすんで0.3mあがる分数の3/10勾配と意味は同じです。
図面では3/10など分数で記載していることが多くなっていますが、呼び方は3寸勾配と呼んだりします。

※1寸は30.3mm、10寸は303mm=1尺

Tips

ちなみに建築では勾配を示すのに角度表記ではなく、3/10などと分数表記をするのが一般的です。角度表記より計算しやすく、長さや高さを出すのに都合がいいからだと思われます。

屋根勾配によるメリット、デメリット

屋根勾配は急勾配、並勾配、緩勾配に分けられます。一般的に勾配により下記のように分けられています。

急勾配はおおむね6寸勾配(6/10勾配)以上の屋根。

並勾配は3寸から5寸勾配(3/10から5/10勾配)程度の屋根。

緩勾配は3寸勾配(3/10勾配)以下の屋根。

屋根材によって最低勾配があります。
最低勾配以上緩くすることは雨漏れの危険が高くリスクが出てくるため各材料により定められた最低勾配を守る必要があります。
各材料の最低勾配は下記記事にまとめていますのでご確認ください。

急勾配のメリット、デメリット

急勾配はおおむね6寸勾配(6/10勾配)以上の屋根をいいます。

デザイン上で屋根を目立たせて個性的な外観にしたり、屋根裏を利用する場合や道路斜線など高さ制限をクリアするため、水はけをよくしたい場合などによく採用される屋根勾配です。

急勾配のメリット

  • 雨水や雪が溜まりにくく流れやすいので雨漏りのリスクが少ない。
  • 雨水やゴミが溜まりにくく屋根材の劣化軽減が期待できる。
  • 雪が溜まりにくく、自然と屋根から落ちるため、積雪荷重を軽減できる。
  • ロフトなど屋根裏を利用することが出来る。
  • 道路斜線などの高さ制限をクリアしつつ、屋根下に空間があるため床面積を多く確保しやすい。
  • デザイン的に重厚感がある外観になり、特徴があるおしゃれな建物にしやすい。

急勾配のデメリット

  • 屋根を施工するために足場が必要。改修やメンテナンス時にも足場を架ける必要があり。コストがかかる。
  • 屋根面積が大きくなり、材料費・工事費が高くなる。メンテナンス費用も高くなる。
  • 足場の設置が必要なため、工期が長くなる。
  • 屋根面積が大きくなることにより、屋根の重量が大きくなり、地震に対して不利になる。
  • 風による影響を受けやすい。
  • 屋根が高くなり、建物最高高さが高くなることにより、高さ制限の影響を受けることがある。

Tips

足場はおおむね6寸勾配(6/10勾配)以上の屋根の工事に必要になります。風が強い地域や安全を確保するためもっと緩い勾配でも足場を架けることがあります。

厚生労働省の「平成18年2月10日付け基発第0210001号 足場先行工法に関するガイドライン」屋根からの墜落防止についての記載がありますので参考にしてください。

屋根勾配が 6/10 以上である場合又はすべりやすい材料の屋根下地の場合には、20 センチメートル以上の幅の作業床を2メートル以下の間隔で設置すること。

平成18年2月10日付け基発第0210001号 足場先行工法に関するガイドライン

並勾配のメリット、デメリット

並勾配は3寸から5寸勾配(3/10から5/10勾配)程度の屋根をいいます。

一般的に広く使われている勾配で、ほとんどの屋根材で適用可能な勾配です。
屋根面積も大きくなりすぎず、雨仕舞もよく、メンテナンス時に足場を架ける必要が無く、勾配がきつすぎず緩すぎず、バランスの取れたコストパフォーマンスがよい勾配です。

並勾配のメリット

  • 足場が不要で施工することが出来る。メンテナンス時も足場が不要。
  • ほとんどの屋根材で適用可能な勾配なので、リフォームで屋根材を変更することも可能。
  • 幅広い屋根材を選択することが出来き、豊富なデザインから選ぶことが可能。
  • 一般的な勾配のため、雨仕舞の納まりも研究されており安心感がある。
  • 施工できる業者が多く、業者を選ぶことができる。
  • 広く普及している勾配のため、街並みに合わせた建物にしやすい。

並勾配のデメリット

  • 広く普及している勾配のため、特徴がない建物になりやすい。

緩勾配のメリット、デメリット

緩勾配は3寸勾配(3/10勾配)以下の屋根をいいます。

デザイン上で屋根を目立たなくするために用いたり、屋根高さを抑えて高さ制限をクリアするためや、屋根面積が小さくなるのでコストを抑えるため、風の影響を受けにくくするためなどによく採用される勾配です。

緩勾配のメリット

  • デザイン上、屋根を目立たなくさせることができる。
  • 屋根面積が小さくなるので、工事費を抑えることができる。
  • 勾配が緩く足場が不要で、作業しやすい。
  • 風の影響が受けにくくできる。
  • 雪は屋根の上に留まりやすく、落雪による危険がすくない。
  • 屋根の高さを低く抑えることができるので、建物高さを抑えることができる。

緩勾配のデメリット

  • 緩い勾配のため、雨水の流れが弱く雨漏れの危険が増す。
  • 雨漏れを防ぐため、一般的な工法より防水シートを増し貼りする必要がある場合がある。
  • 雨水の滞留が起きやすく、屋根材の劣化が早くなる恐れがある。
  • 屋根裏が狭くなり、屋根裏利用が難しい。
  • 雪が一定以上積もった場合は雪下ろしが必要な場合がある。

まとめ

屋根の形状は建物の外観や施工コスト、リフォームのコストや、雨仕舞、雪の落雪・無落雪、屋根材料の劣化のスピードなど様々なことに影響します。高さ制限をクリアするためなどでどうしようもない場合もありますが、屋根は雨風をしのぐという建物の基本性能で特に重要な要素です。屋根の知識を身に着けて適切な勾配の屋根にしましょう。

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